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Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうじゅんさ

老巡査

夢野 久作

Lesen Sie 老巡査 (ろうじゅんさ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.237 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

事であった。

彼はこうして誰を怨む力もなくなった彼自身の姿を、灰になりかけた火鉢の縁に発見したのであった。そうして彼の眼の底に蠢めくものは結局、瘠せ衰えた彼の妻と、その周囲を飛びまわったり匐いまわったりしている子供たちの姿ばかりになってしまった。

彼はそうした幻影を見まいとしてシッカリと眼を閉じた。すると最前から溜まっていた生温い泪がポタポタと火鉢の灰の中に落ちた。その一粒が消えかかった炭火の上に落ちたらしくチューチューと音を立てたが、その音を聞いているうちに又も新しい涙が湧出して来るのを、彼はドウする事も出来なかった。

そんな事を考えまわしているうちにいつの間にか時間が経ったらしい。彼の背後の柱時計が夢のように一時を打つと間もなく、非常線に出ていた同僚の二三名がバタバタと帰って来た。

「……ああ……ねむいねむい……」

「いくら云うたて新米の署長は駄目じゃよ。第一非常線からして手遅れじゃないか。青年会なぞ出したって何の足しになるものか」

「まあそう云うなよ。お蔭で無駄骨折が助かるじゃないか」

「指紋もないそうですね」

「ウン、今頃は犯人等、千里向うで昼寝してケツカルじゃろ。