Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしょ
聖書
生田 春月
Lesen Sie 聖書 (せいしょ) von 生田 春月 (いくたしゅんげつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.023 Zeichen · 6 Bildschirme
急いでそれを灰皿につっこんで、僕はまた例の聖書を手に取った、真黒な足袋の裏をあわてて下におろしながら。
どうも僕の様子はまずこの聖書ぐらいは見すぼらしいに違いない。それが立派な旗本で、今は会社の重役の次男なる主人公と同じ貴族的な態度ですまし込んでいたのだ、と思うと、僕は顔が真紅になるような気がした。だが、女中さんの噴き出したのは、ただ何がなしにその場のシテュエーションの然らしめたところだろう、若い女というものは箸が転んでも笑うと云うではないか、尠くともそれは僕に対する嘲笑ではない筈だ、それは彼女の目がよく証明している、などと僕はひとりでしきりに推究した。なお進んでは、此家の主人公がこの白銅一個を以て購い得た古書に無限の価値を見出して賞玩するように、このかわいらしい女中さんも僕の見すぼらしさの中から何等かの価値を見出してくれているかも知れないなどと、例の詩人らしいいい気な自惚れに没頭していると、
「さあ、今日は酒でも飲みながらゆっくり話そう」と云って、Kさんは二つの杯になみなみとウィスキイをついだ。
僕はすぐ酔ってしまった。Kさんのふだんはぼんやりと霞がかかったようにやわらかな顔が、輪廓がはっきりして来て、妙に鋭くなっている。