Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しょっこうとびしょう

職工と微笑

松永 延造

Lesen Sie 職工と微笑 (しょっこうとびしょう) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.696 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

それから又、もう本統に恋の悩みで面やつれているように弱々しく歩み返し、吐息をついて、生垣の前へ戻ると、そこに転がっていた五寸位直径のある石の下へ手紙をはさんで、一寸娘へ哀願するような一瞥を投げ、思い切ったように立ち上って、早足に其処を遠ざかった。私はそっと振り向いて見た。娘はじっと私を見送って、小さい門の所に立って居た。けれども未だ手紙を石の下から出す勇気は起っていぬらしかった。何でも彼の女は胸を高く波打たせて思案しているらしかった。

「そうだ。私の姿が見える間、娘は決して手紙を取り上げはしまい。明日が楽しみだ。明日だ。明日行って見ると、もう石の下には何もない。唯娘の眼がユッタリと頷ずいているのだ。おお之はもうたまらぬ事だ。」

私はクスクスと笑ったり、又深い理由のない憂いに沈んだりして一夜を明かした。それから何時もの時刻に娘の家へ近附いた。娘はいくら見ても居なかった。悲しい落胆の予感が私の心臓を痛くしめくくった。何うしたのだろう。私は夢中になって生け垣の中をのぞいた。それから石を上げて見た。「アッ!」と私は早くも本式に落胆した。石の下には未だその儘で手紙が残っていた。