Japanische Klassiker mit Furigana
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しょっこうとびしょう
職工と微笑
松永 延造
Lesen Sie 職工と微笑 (しょっこうとびしょう) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.696 Zeichen · 144 Bildschirme
彼は吐息を一つすると、直ぐ車を動かし初めた。走って居る間中、運転手は故郷へ置いて来た自分の母親の事を、あれから之と懐い続けるのであった。十日程前、手紙で母親を騙し、十円の金を送らせて、全く無益な酒色の為めに費して了った事が、彼自身にも口惜しくて、彼は思うさま大きく警笛を響かせた。それから、態と行路を替えて、廻り道をし、車上の老いた人へ日光を当ててやろうかとさえ考えたが、不意に眼へ一杯の涙をためて了ったのであった。
親と子は車を降り去った。残った運転手は郵便局へ入って母へ宛てた為替を組んだ。それに添えて、「お母さん、丈夫かね。日中だけは畑へ出ず、体を大切にして下さい。」と下手な文字をも書きつらねた。
田舎で、息子の手紙と、いくらかの金を受けとった母親の喜びは何んな風であったか? まして、それが一度も子供から親切にされた覚えのない母親であって見れば、尚更の事である。
母親はよろけ乍ら、隣家の方へ駈けて行った。然し、此の喜びを、そうたやすく他人に打ち明けてはなるまい、と思ったか、再び我が家へ走って来て、声を上げて、息子の簡単な手紙を読んだ。声の終りの方は小鳥のそれのように顫えた。