Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

Lesen Sie 肌色の月 (はだいろのつき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.706 Zeichen · 101 Bildschirme

Aozora Bunko

「私に出来ることがあったら」

「おねがいしたいことがあるんだけど」

長男が熱っぽくいった。

「ええ、なんでも」

「それで、あなた……」

「隆です」

「隆さん、あたしを一人にしておいていただきたいの……女が着換えをしているところなんか、見るほうが損をするわ」

それでも動かない。久美子は癇をたてて、ナイト・ガウンの上前をおさえながら隆のほうへ向きかえた。

「あたしの言ったこと、おわかりにならなかったかしら」

「よくわかっていますが、ちょっと……」

隆は広間に張りだした廊下のほうへ、ほのかな目づかいをしてから、上着のポケットからなにかだして、だまって夜卓の上に置いた。

久美子が湖水に身を沈める前に飲むことにしていた睡眠剤の小さなアンチモニーの容器だった。

「これが、どこに?」

「煖炉のそば……薪箱の中に」

ジャンパーの胸のかくしに入れておいた。椅子の背に掛けて乾かしているうちに、ころげだしたのらしい。

「ブロミディア……十錠が致死量とは、すごい催眠剤ですね」

死んだように動かない嫌味な眼を除けば、どこといって一点、特色のない平凡なサラリーマンのタイプだ。たいして頭のいいほうでもないらしいが、この青年は、久美子がなにをしようとしているか、もう察しているらしい。