Japanische Klassiker mit Furigana
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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
Lesen Sie 肌色の月 (はだいろのつき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.706 Zeichen · 101 Bildschirme
久美子は腹をたてて、大きな声でやりかえした。
「なんであろうと、強制されるのは、まっぴらよ」
「昨日、捜査主任に、父の死体は揚らないだろうといったそうですね。父の死体が揚ると、困ることがあるんでしょう」
「そんなふうには言わなかったわ……探しても見つからないなら、最初から死体なんか無かったんだろう、と言ったのよ」
「それは、どういう意味ですか」
久美子は怒りに駆られて、心にあることを、そのままぶちまけた。
「湖水の底を探すより、キャンプ村のバンガローでも探すほうが早道だろうということよ」
石倉が軋るような声でいった。
「大池さんはバンガローにはいません。居たら幽霊だ……バカなことを言っていないで、船に乗ってください」
「それで、どこを探そうというの?」
「昨日も申しましたが、最深部の吸込孔を」
「この湖水に、吸込孔なんか、あるんでしょうか」
「湖水を知り尽しているようなことをいうけど、もし、吸込孔があったらどうします」
「あるなら、見物したいわ……あたしにとっても、興味のあることなのよ」
「お見せしましょう」
アクア・ラングを積んだ平底船が船着場に着いていた。
もう夏の陽射しで、シャボンの泡のような白い雲の形が波皺もたてぬ湖面に映っている。