Japanische Klassiker mit Furigana
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せんいのたちば
船医の立場
菊池 寛
Lesen Sie 船医の立場 (せんいのたちば) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.712 Zeichen · 22 Bildschirme
最初、船頭を賺して、夜中潜かに黒船に乗り込もうとしたけれども、いざその場合になると、船頭連は皆しりごみした。薪水を積み込む御用船に乗り込んで、黒船に近づこうとしたけれども、それも毎船与力が乗り込んで行くために、便乗する機会はなかった。
八日の日には、メリケン人が横浜村へ上陸したときいたので、かねて起草しておいた投夷書を手渡す機会もと駆け付けたが、彼らはすでに船へ去って、メリケン人を見た村人たちのかまびすしい噂をきいただけだった。
九日の日は、金子重輔が舟がとにかく漕げるというのを幸いに、漁舟を盗んで、黒船へ投じようとした。が、昼間舟の在り処を見定めて、夜行って見ると、舟は何人かが乗り去ったとみえて影もなく、激しい怒涛が暗い岸の砂を噛んでいるだけだった。二人が、失望して茫然と立っていると、野犬が幾匹も集って来て、けたたましく吠えた。
「泥棒をするのが難しいことが、初めてわかったぜ」
勝気な寅二郎は、そういって笑ったが、雨が間もなく降り出し、保土ヶ谷の宿へ丑満の頃帰ったときは、二人の下帯まで濡れていた。
十一日、十二日と二人は保土ヶ谷の宿で、悶々として過した。