Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えんしょ

艶書

山本 周五郎

Lesen Sie 艶書 (えんしょ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.027 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

こんなふうに考えているうちに、出三郎はふとぎぎっとし、おちつかない眼であたりを見まわした。

――悪戯をされたんだよ。

そういう声が聞こえたように思ったのである。もちろん心の中の声だが、まるでそこに誰かいて、うしろからそっとささやきでもしたような感じであった。彼は急に興冷めた気持になり、渋い顔をして手紙を投げだした。

「まあそんなところでしょう」と彼は自分に云った、「こんな部屋住みの、こんな気のきかない人間に、本気で恋をするような娘があるわけはない、まあうぬぼれないほうがいいでしょうな」

しかし実際にはそう簡単に割り切れるものではない。本当にそういう娘がいて、自分のために悩んでいるという気もする。同時にそれが誰かの悪ふざけで、当人は共謀者(あるとすれば)といっしょに、どこかでくすくす笑っているようにも思えた。

「そうだ、七重に話してみよう」やがて、眠れない寝床の中で彼はそう呟やいた、「七重に話してみれば見当がつくかもしれない、少なくとも悪戯かどうかくらいはわかるだろう」

明くる朝。――

井戸端で顔を洗っていると、生垣越しに七重の姿を認めた。彼女は紫色の地にこまかく花を染めだした振袖を着、金茶色の帯をしめ、髪には簪がきらきら光っていた。