Japanische Klassiker mit Furigana
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しばいきょうぼうけん
芝居狂冒険
夢野 久作
Lesen Sie 芝居狂冒険 (しばいきょうぼうけん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.334 Zeichen · 21 Bildschirme
その立並んだ樅板が万平には書割(かきわり)に見えたり、カンカン秋日の照る青空が花四天に見えたりするのであろう。二三町(ちょう)四方人気のないのを幸いに、杉板の束を運び集めながら、新派旧派の嫌いなく科白(せりふ)の継ぎ剥ぎを復習(おさらい)し続けて行く。
「我が日の本の魂が、凝(こ)り固まったる三尺の秋水(しゅうすい)。天下法度(はっと)の切支丹(きりしたん)の邪法、いで真二(まっぷた)つに……」
万平はフッと科白(せりふ)を中止した。スグ向うに並んだ松板の間からチラリと見えた赤い物に気が付いたからであった、担(かつ)いでいた杉皮の束を、鋸屑(おがくず)の山盛りの上に置くと、ハテナという思い入れ宜しくあって抜足さし足も半分、芝居がかりに壁のように並んだ松板の蔭に近寄った。その隙間(すきま)からソッと向うの竹束の間の空地を覗いたが、忽ち眼を丸くして舌をダラリと垂らした。
竹束の前の大きな欅(けやき)の角材に腰をかけたインバネスに中折帽の苦み走った若い男が、青ざめた澄ました顔をして金口煙草(きんくち)に火を点(つ)けている。その横に下町風の大桃割(ももわれ)に結った娘が、用足しに出た途中であろう。