Japanische Klassiker mit Furigana
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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
Lesen Sie 花も刀も (はなもかたなも) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.364 Zeichen · 178 Bildschirme
この年まで生きていると、数えきれないほど見たり聞いたりして来ました、妙なもんだ、しかし、これが世の中だ……いまではそう思うようになりました、枯れる木は枯れるってな、しかし妙なもんだと思いますよ」
老人の言葉には、なんの意味もなかった。深喜に聞かせるためではなく、独り言を云っているようであった。
だが、深喜は、しだいに気がおちつき、昂奮が、しずまるのを感じた。老人の淡々とした話しぶりを聞いているうちに、
「おれはこれからだ」と、心のなかで思った。
「枯れる木は枯れるか」
そうかもしれない。しかし枯れるまで生きているのだ。どんな木も、いつかは枯れるし、人間もいつかは死ぬ。だが、死ぬまで生きるのだ。おれの一生も終ったのではなく、始まったばかりだ。おれは、まいらないぞ、このくらいのことで、まいるような人間じゃないぞ。
もっと悪い事が起これ、どんな困難にも、耐えぬいてみせるぞ、と深喜は心のなかで叫び、老人に振返って「その提灯を持とう」と云い、提灯を受取ると、明るい調子で云った。
「せっかくだから休ませてもらうよ、爺さん」
二人は暗い街を歩み去った。