Japanische Klassiker mit Furigana
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はなよい
花宵
山本 周五郎
Lesen Sie 花宵 (はなよい) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.938 Zeichen · 18 Bildschirme
「英三郎、……英三郎」
と呼ばれてはっと眼をさますと、枕元に母が坐っていた。彼はびっくりして起き直った、母の右手には曽我物語の本が握られていた。
「あかりをつけたまま寝るとはなにごとです」
「はい、悪うございました」
「それだけではありません、夜具の中で本など読んではならぬと、いつも母が云ってあるのを忘れたのですか」
英三郎は両手をついて顔を伏せた。
「おゆるしください母上、もう決して致しません」
「今夜はもう更けているからゆるしてあげます」
母はそう云いながら立った。
「顔がよごれていますよ、洗って来てすぐにおやすみなさい。この本は母が預かります」
武家は朝が早い、兄弟はずっと幼い頃から真冬でも四時には起される、水でからだを清め、庭へ出て汗のながれるまで木剣を振る、それからもういちど洗面して食事をとり、武術の稽古と学問の勉強にそれぞれの師匠のもとへゆく、帰るのはたいてい午後三時すぎであった。
武術や学問の稽古にかようときは、必要な道具に弁当を持つために下僕がひとり供をしてゆくのが習慣であったけれど、父が亡くなってから間もなく兄弟は供なしでかようようになった。