Japanische Klassiker mit Furigana
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はなよい
花宵
山本 周五郎
Lesen Sie 花宵 (はなよい) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.938 Zeichen · 18 Bildschirme
三
まえの晩、更けてから母に呼びおこされて叱られたので、あくる朝いつもの時刻に起きたけれど、英三郎は寝足りないようで眼がしぶかった。
「おい英三郎、来てみろ、満開になったぞ」
さきに井戸端へ出て、元気にからだを拭いていた清之助は、弟が庭へおりて来るのを待ち兼ねて叫んだ。庭の隅にある桜の老木が、まだほの暗い朝の光のなかでみごとに満枝の花を咲かせていた。英三郎はねむい眼がいっぺんにさめたように思い、
「本当ですね、ずいぶんよく咲きましたね」
と云いながら兄のほうへ近よっていった。
三
「あの花の下で仕合をしないか、英三郎」
清之助はいいことを思いついたというように、いきいきと眼を輝かせながら、
「ただ木剣を振るだけじゃつまらない、今朝はふたりで仕合をしよう、満開の花の下で武術の稽古をするなんて寛永武士みたいでいいじゃないか」
「でも道具を汗にしてしまうと……」
「道具なんかつけやしない木剣でやるんだ」
「だってそれでは怪我をしますもの」
「よせよ、おれとおまえとでは段がちがう、どんなことがあったっておまえに怪我をさせるようなへまはしないよ、さあやろう」云いだしたらきかない兄だし、段ちがいと云われたことも癪だった。