Japanische Klassiker mit Furigana
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はなたばのむし
花束の虫
大阪 圭吉
Lesen Sie 花束の虫 (はなたばのむし) von 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.893 Zeichen · 36 Bildschirme
二種の靴跡は、或は強く、或は弱く、曲ったり踏込んだり、爪先を曳摺る様につけられたかと思うとコジ曲げた様になったりしながら、激しく入り乱れて崖の縁迄続いている。そうして、崖の縁で直介の靴跡は消えて了い、その代りに角の砂地がその上を重い固体の墜ちて行った様に強く傷付けられている。下は、眼の眩む様な絶壁だ。
大月はホッとして振返ると、今度は逆にもう一度靴跡を辿り始めた。が、二種の靴跡が普通に歩いている処迄来ると、小首を傾げながら屈み込んで、其処に比較的ハッキリと残されている犯人の靴跡へ、注意深い視線を投げ掛けていた。が、軈て顔を上げると、
「ふむ。こりゃ面白くなって来た」と、それから証人に向って、不意に、「貴方は確かに犯人は男だ、と言いましたね。――ところが、犯人は女なんですよ。――」
秋田も証人も、大月の意外な言葉に吃驚して了った。二人は言い合わした様に眼を瞠りながら、靴跡を覗き込んだ。が、勿論二人の眼には、どう見てもそれは踵の小さいハイ・ヒールの女靴の跡ではなく、全態の形こそ小さいが、明かに男の靴跡としか見られない。秋田は、大月の言葉を求める様にして顔を上げた。