Japanische Klassiker mit Furigana
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はなたばのむし
花束の虫
大阪 圭吉
Lesen Sie 花束の虫 (はなたばのむし) von 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.893 Zeichen · 36 Bildschirme
を読みたがる直介を無理に誘い出し、あの証人が黒いトランクと間違えたこの手提蓄音器を携えて梟山へピクニックに出掛けたのだ。この場合僕は、あの兇行をハッキリと意識して夫人はあんな奇矯な男装をしたのだと考えたくない。それは、犯罪前のあの微妙な変則的な心理の働き――謂ば怯懦に近い、本能的な用意、がそうさせたのだ。そして夫人は、絶えず『花束の虫』から直介の関心を外らす為に、努力しなければならなかった。――軈て、見晴のいいあの崖の上で、二人はダンスを踊り始めたのだ。あのうわずった調子の、情熱的なスパニッシュ・ワンステップをね。そして、その踊の、情熱の、最高潮に達した時に、今迄夫人の心の底でのたうち回っていた悪魔が、突然首を持上げたのだ。――茲で君は、あの証人が、馬鹿にあっさり墜されたと言って不思議がっていた言葉を思い出せばいい。――それからの夫人は、完全に悪魔になり切って、もう恐れる必要もなくなった『花束の虫』を破り捨てると、手提蓄音器を携えて直ぐに別荘へ引返したのだ。そして、最も平凡な犯罪者の心理で、あんな風に証人の一役を買って出た――と言うわけさ。……兎に角この手提蓄音器を開けて見給え。