Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

わかすぎさいばんちょう

若杉裁判長

菊池 寛

Lesen Sie 若杉裁判長 (わかすぎさいばんちょう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.238 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

その時に、ふと「泥棒は逃せばよい」という考えが浮びました。若杉さんは、泥棒の不意の襲撃を避けるために、二、三歩後へ退きながら「わあーっ」と力限りの大声を出しました。が、その声は、まったく予期しない結果をひき起しました。若杉さんは、自分の声が終るか終らぬかに、次の部屋から夫の声に怯えた妻の恐ろしい悲鳴をききました。それと、同時に居間の向うの部屋からは三人の愛児が、おどろいて泣き出しました。

親子五人の声におどろいたと見え、泥棒はいつの間にかいなくなっていました。むろん、一物も盗んではいませんでした。

が、衰弱した身体にそうした激動を受けた夫人は、急に高熱が出たのも無理はありません。その翌日は、四十度に近い熱が一日続きました。その上、極度に過敏になった夫人の神経は、些細な物音にも怯えるようになりました。主治医は、夫人の生命そのものについても、憂慮を懐くようになりました。

その上、三人の愛児までが、その夜のできごとがあって以来、妙にものに怯える臆病な子供になりました。

若杉さん自身も、あの泥棒と相対峙した一分間ばかりの、息も詰まるような、不快な、不安な圧迫から、なかなか抜けきることができませんでした。