Japanische Klassiker mit Furigana
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えいゆうのうつわ
英雄の器
Lesen Sie 英雄の器 (えいゆうのうつわ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.610 Zeichen · 4 Bildschirme
そうして、実際三度どころか、九度も戦って勝っているです。私に云わせると、それが卑怯だと思うのですな、自分の失敗を天にかずける――天こそいい迷惑です。それも烏江を渡って、江東の健児を糾合して、再び中原の鹿を争った後でなら、仕方がないですよ。が、そうじゃない。立派に生きられる所を、死んでいるです。私が項羽を英雄の器でないとするのは、勘定に暗かったからばかりではないです。一切を天命でごまかそうとする――それがいかんですな。英雄と云うものは、そんなものじゃないと思うです。蕭丞相のような学者は、どう云われるか知らんですが。」
呂馬通は、得意そうに左右を顧みながら、しばらく口をとざした。彼の論議が、もっともだと思われたのであろう。一同は互に軽い頷きを交しながら、満足そうに黙っている。すると、その中で、鼻の高い顔だけが、思いがけなく、一種の感動を、眼の中に現した。黒い瞳が、熱を持ったように、かがやいて来たのである。
「そうかね。項羽はそんな事を云ったかね。」
「云ったそうです。」
呂馬通は、長い顔を上下に、大きく動かした。
「弱いじゃないですか。いや、少くとも男らしくないじゃないですか。