Japanische Klassiker mit Furigana
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くさまくら
草枕
Lesen Sie 草枕 (くさまくら) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.485 Zeichen · 170 Bildschirme
――頭あ洗いましょうか」
「頭はよそう」
「頭垢だけ落して置くかね」
親方は垢の溜った十本の爪を、遠慮なく、余が頭蓋骨の上に並べて、断わりもなく、前後に猛烈なる運動を開始した。この爪が、黒髪の根を一本ごとに押し分けて、不毛の境を巨人の熊手が疾風の速度で通るごとくに往来する。余が頭に何十万本の髪の毛が生えているか知らんが、ありとある毛がことごとく根こぎにされて、残る地面がべた一面に蚯蚓腫にふくれ上った上、余勢が地磐を通して、骨から脳味噌まで震盪を感じたくらい烈しく、親方は余の頭を掻き廻わした。
「どうです、好い心持でしょう」
「非常な辣腕だ」
「え? こうやると誰でもさっぱりするからね」
「首が抜けそうだよ」
「そんなに倦怠うがすかい。全く陽気の加減だね。どうも春てえ奴あ、やに身体がなまけやがって――まあ一ぷく御上がんなさい。一人で志保田にいちゃ、退屈でしょう。ちと話しに御出なせえ。どうも江戸っ子は江戸っ子同志でなくっちゃ、話しが合わねえものだから。何ですかい、やっぱりあの御嬢さんが、御愛想に出てきますかい。どうもさっぱし、見境のねえ女だから困っちまわあ」
「御嬢さんが、どうとか、したところで頭垢が飛んで、首が抜けそうになったっけ」