Japanische Klassiker mit Furigana
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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下) (くさもみじ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.512 Zeichen · 63 Bildschirme
この男は見て見ぬように踊子たちの姿と、物食う様子とを、楽し気に見やりながら静かに手酌の盃を傾けていた。踊子の洋装と化粧の仕方を見ても、更に嫌悪を催す様子もなく、かえって老年のわたくしがいつも感じているような興味を、同じように感じているものらしく、それとなくわたくしと顔を見合せるたびたび、微笑を漏したいのを互に強いて耐えるような風にも見られるのであった。思うにこの老幇間もわたくしと同じく、時世と風俗との変遷に対して、都会の人の誰もが抱いているような好奇心と哀愁とを、その胸中に秘していたのだろう。
暖簾外の女郎屋は表口の燈火を消しているので、妓夫の声も女の声も、歩み過る客の足音と共に途絶えたまま、廓中は寝静ってタキシの響も聞えない。引過のこの静けさを幸いといわぬばかり、近くの横町で、新内語りが何やら語りはじめたのが、幾とし月聞き馴れたものながら、時代を超越してあたりを昔の世に引き戻した。頭を剃ったパッチばきの幇間の態度がいかにもその処を得たように見えはじめた。わたくしは旧習に晏如としている人たちに対する軽い羨望嫉妬をさえ感じないわけには行かなかった。