Japanische Klassiker mit Furigana
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はなばなしきしゅんかん
華々しき瞬間
久坂 葉子
Lesen Sie 華々しき瞬間 (はなばなしきしゅんかん) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.114 Zeichen · 92 Bildschirme
仁科六郎は打たれたことを何とも感じていなかった。彼は阿難のことしか考えていなかったのだ。
それは、三人の会見後、又二週間もたった日の午後十時。飲酒の後の露地であった。仁科六郎と蓬莱和子のその日はまだつづく。二人とも、しきりに飲むことを要求し、気づまりな表情で又のみはじめ、のみ終えた時、蓬莱和子の乗る神戸行の電車はもうなかった。
「家へ泊りに来なさい」
蓬莱和子は度々外泊している。しかも、昨日も一昨日もだ。彼女はすぐに仁科六郎のあとに従った。蓬莱和子はまだ仁科六郎の妻を知らない。そして、電車に乗りおくれたことがよかったと思った。彼女は自信のある女性である。即ち、美貌に於いて。即ち才智に於いて。
仁科六郎は歩行をゆるめた。
「どのおうち」
「いや、まだまだだ」
「じゃあ、いそぎましょう」
蓬莱和子は機嫌がよかった。
「まだ遠いの」
「その角をまがればじきだ」
仁科六郎の歩みはますますのろい。
「どうしたの、のみすぎたのじゃない」
蓬莱和子は、先刻の気づまりな空気をさらりと忘れて、これから会う人の自分への信頼をたのしみにしている。それを感じた仁科六郎は苦々しく思った。