Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちばいき

落ち梅記

山本 周五郎

Lesen Sie 落ち梅記 (おちばいき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.748 Zeichen · 61 Bildschirme

Aozora Bunko

あのひとも沢渡へ来るつもりがあったようだ。けれどもおまえがあのひとを求め、あのひとが来て呉れれば身持を直すと聞いて、おまえの妹からもせめられて、本当にそのつもりになって公郷へいったんだ、――あの鏡は、ずっと小さいときに遣る約束がしてあった。あのひとがあれを持っていったのは、二人の思い出をつなぐためではなく断切るためだ、あの鏡には古い思い出がある。置いていっては心が残るようだ、……あのひとはそう云った。古い思い出を断切るために、心残りをなくすために持っていったものだ、それをぬけがらとは」

金之助の眼から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。半三郎はなかば口をあき、眼をつむったまま頭を左右へ揺すった。

「あのひとは見ちがえるように痩せ窶れた。なぜだかわかるか。半三郎には人にすぐれた才能があるのに、不運なめぐりあわせで世に出られない、一生埋れ木で終るかもしれない、それがやりきれなさに放蕩をする、放蕩は苦しさの余りだとあのひとは信じている。そういうおまえを見る辛さがあのひとをあんなに痩せさせたんだ、――よく考えてみろ、半三郎、そんな卑しいことを思うまえに、もっと男らしい思案がなければならぬ筈だぞ」