Japanische Klassiker mit Furigana
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おちむしゃにっき
落武者日記
山本 周五郎
Lesen Sie 落武者日記 (おちむしゃにっき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.460 Zeichen · 23 Bildschirme
「まあ、本当でございますか」
娘は満面に、つきあげるような歓喜の表情をうかべながら、男の顔を仰ぎ見た。
「本当です」
祐八郎はそう答えた。……早くも彼は、自分のうしろに、家康から跟けてよこした、隠密の眼が光っているのを感付いたのである。……彼が行くところへはどこまでも跟いて来る眼だった。――いま御主君を捜しに出ることはできない。いずれにしても、こうなる運命だ、娘の親切にまかせて、当分はようすをみるほかに手段はない。
「本当ですとも」
祐八郎は、跟けて来る隠密に聞けとばかり云った。
「拙者は、このまま百姓になろうかとまで考えていますよ」
「まあ大畑さま」
娘の明るい声が、松並木に快い反響を呼び起した。……湖畔の道は、清らかな秋の日ざしを浴びて、白々と石山の里へとのびていた。