Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちむしゃにっき

落武者日記

山本 周五郎

Lesen Sie 落武者日記 (おちむしゃにっき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.460 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

混沌とした意識の底から、現よりも鮮かな幻の声が、またしてもなまなましく甦ってきた。その声で、祐八郎はふっと意識をとりもどした。

「もし、……もし、お武家さま」

声はまえよりもはっきりと聞えた、……白い顔と、美しい眉とが、祐八郎の眼にうつった、彼は夢のようにそれを見ていたが、やがて、自分の眼前に、一人の若い娘がいることを認めた。

――いかん。

気付いて、彼はがばとはね起きた、いや、はね起きようとして、背骨に伝わる鋭い痛みのために、呻き声をあげながら顛倒した。

「危のうございます」

娘は誘われるように走せ寄って、祐八郎の肩を抱いた、……柔かく、温い娘の体は、祐八郎に分るほどわなわなと震えていた。

「お立ちあそばしてくださいまし、すぐそこにわたくしの家がございます、ここでは人眼にかかるといけませぬから」

「……拙者は石田軍の落人だ」

「よく分っております」

「拙者に関わっては、あなたに迷惑がかかる、もし……その気があったら、ここにいたことだけを、他言しないでください」

「よく分っております」

娘は聡明な眸子に泪さえうかべながら、優しく頷いて云った。

「でもお怪我をしておいでのようすですし、このままではどうあそばすこともできませぬ、わたしの家は里からも遠く、家には病気で寝たきりの父一人しかおりませぬ、けっして御心配あそばさず