Japanische Klassiker mit Furigana
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あし
葦
山本 周五郎
Lesen Sie 葦 (あし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.406 Zeichen · 25 Bildschirme
たしかに、彼は満足した老人であった。だがすべてに満足しているわけではない。口髭は白いが髪毛はまだ黒くてたっぷりある、顔色も艶つやしているし、固肥りの体は弾力と精気に満ちている。彼はその年の春に御用頭を辞し、家を長男に譲って隠退した、しかしそれは国家老の席を獲るための予備手段であった。隠退すれば多年の功労によって年寄役に任ぜられる、それは国家老格で藩政の監察官に当る。彼だけの経験と才能を活かせば、そこから国家老の席へ手を伸ばすことは困難ではない、……彼にはもっともそぐわない魚釣りなどを始めたのも、世俗の野心を棄てたとみせる姿勢にすぎなかった。
彼はみぎわに腰をおろし、釣竿を垂れた。岸は北へ向いているし、椎の樹の影がおちるので涼しかった、風もよくとおり、葦がさやさやと揺れわたった。
やがて煙草が喫いたくなって、持っていた竿を土に突き刺そうとした。そこは柔らかい粘土質で葦の根が張っているだけだ。突き刺した竿は反抗を受けた、しかし葦の根ではない、空洞を打つような手ごたえである。彼はこころみに竿の根元で土を掘ってみた、するとさしわたし五寸ばかりの、円い筐のような物が出てきた。