Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ねぎ

葱

芥川 竜之介

Lesen Sie 葱 (ねぎ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.150 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

までも燦びやかに続いているかと思われる。今夜に限って天上の星の光も冷たくない。時々吹きつける埃風も、コオトの裾を巻くかと思うと、たちまち春が返ったような暖い空気に変ってしまう。幸福、幸福、幸福……

その内にふとお君さんが気がつくと、二人はいつか横町を曲ったと見えて、路幅の狭い町を歩いている。そうしてその町の右側に、一軒の小さな八百屋があって、明く瓦斯の燃えた下に、大根、人参、漬け菜、葱、小蕪、慈姑、牛蒡、八つ頭、小松菜、独活、蓮根、里芋、林檎、蜜柑の類が堆く店に積み上げてある。その八百屋の前を通った時、お君さんの視線は何かの拍子に、葱の山の中に立っている、竹に燭奴を挟んだ札の上へ落ちた。札には墨黒々と下手な字で、「一束四銭」と書いてある。あらゆる物価が暴騰した今日、一束四銭と云う葱は滅多にない。この至廉な札を眺めると共に、今まで恋愛と芸術とに酔っていた、お君さんの幸福な心の中には、そこに潜んでいた実生活が、突如としてその惰眠から覚めた。間髪を入れずとは正にこの謂である。薔薇と指環と夜鶯と三越の旗とは、刹那に眼底を払って消えてしまった。その代り間代、米代、電燈代、炭代、肴代、醤油代、新聞代、化粧代、電車賃――そのほかありとあらゆる生活費が、過去の苦しい経験と一しょに、恰も火取虫の火に集るごとく、お君さんの