Japanische Klassiker mit Furigana
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がもううじさと
蒲生氏郷
幸田 露伴
Lesen Sie 蒲生氏郷 (がもううじさと) von 幸田 露伴 (こうだろはん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.772 Zeichen · 128 Bildschirme
十八万石程から一足飛に四十二万石の大封を賜わったのだから、たとい大役を引受けさせられたとは云え、奥州出羽の押えという名誉を背負い、目覚ましい加禄を得たので、家臣連の悦んだろうことは察するに余りある。これは八月十七日の事と云われている。
丁度仲秋の十六夜の後一日である。秋は早い奥州の会津の城内、氏郷は独り書院の柱に倚って物を思って居た。天は高く晴れ渡って碧落に雲無く、露けき庭の面の樹も草もしっとりとして、おもむきの有る夜の静かさに虫の声々すずしく、水にも石にも月の光りが清く流れて白く、風流に心あるものの幽懐も動く可き折柄の光景だった。北越の猛将上杉謙信が「数行ノ過雁月三更」と能登の国を切従えた時吟じたのも、霜は陣営に満ちて秋気清き丁度斯様いう夜であった。三国の代の英雄の曹孟徳が、百万の大軍を率いて呉の国を呑滅しようとしつつ、「月明らかに星稀にして、烏鵲南に飛ぶ」と槊を馬上に横たえて詩を賦したのも丁度斯様いう夜であった。江州日野五千石ばかりから取上って、今は日本無双の大国たる出羽奥州、藤原の秀衡や清原武衡の故地に踏みしかって、四十二万石の大禄を領するに至った氏郷がただ凝然と黙々として居る。