Japanische Klassiker mit Furigana
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あおじろいつき
蒼白い月
徳田 秋声
Lesen Sie 蒼白い月 (あおじろいつき) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.440 Zeichen · 19 Bildschirme
桂三郎は、私の兄の養子であったが、三四年健康がすぐれないので、勤めていた会社を退いて、若い細君とともにここに静養していることは、彼らとは思いのほか疎々しくなっている私の耳にも入っていたが、今は健康も恢復して、春ごろからまた毎日大阪の方へ通勤しているのであった。彼の仕事はかなり閑散であった。
どこを見ても白チョークでも塗ったような静かな道を、私は莨をふかしながら、かなり歯の低くなった日和下駄をはいて、彼と並んでこつこつ歩いた。そこは床屋とか洗濯屋とかパン屋とか雑貨店などのある町筋であった。中には宏大な門構えの屋敷も目についた。はるか上にある六甲つづきの山の姿が、ぼんやり曇んだ空に透けてみえた。
「ここは山の手ですか」私は話題がないので、そんなことを訊いてみた。もちろん私一箇としては話題がありあまるほどたくさんあった。二人の生活の交渉点へ触れてゆく日になれば、語りたいことや訊きたいことがたくさんあった。三十年以前に死んだ父の末子であった私は、大阪にいる長兄の愛撫で人となったようなものであった。もちろん年齢にも相当の距離があったとおりに、感情も兄というよりか父といった方が適切なほど、私はこの兄にとって我儘な一箇の驕慢児であることを許されていた。