Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

うすこうばい

薄紅梅

泉 鏡花

Lesen Sie 薄紅梅 (うすこうばい) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 61.133 Zeichen · 122 Bildschirme

Aozora Bunko

冷い香水がざっと流れる。どこか場末の床店が、指の尖で、密とクリームを扱いて掌で広げて息で伸ばして、ちょんぼりと髯剃あとへ塗る手際などとは格別の沙汰で、しかもその場末より高くない。

お職人が念のために、分け目を熟と瞻ると、奴、いや、少年の助手が、肩から足の上まで刷毛を掛ける。「お麁末様。」「お世話でした。」と好い気持になって、扉を出ると、大理石の床続きの隣、パール(真珠)と云うレストランに青衿菫衣の好女子ひとりあり、緑扉に倚りて佇めり。

「番町さん。」

「…………」

「泉さん。」

驚いて縮めた近目の皺を、莞爾……でもって、鼻の下まで伸ばさせて、

「床屋へお入んなったのを……どうもそうらしいと思ったもんですから、お帰り時分を待っていたの、寄ってらっしゃいよ。」

「は、いや、その。」

ああ、そうか、思い出した。この真珠の本店が築地の割烹懐石で、そこに、月並に、懇意なものの会がある。客が立込んだ時ここから選抜きで助けに来た、その一人である。

「どこかへいらっしゃる、ちょっと紅茶でも。」

面喰った慌しい中にも、忽然として、いつぞのむかし吉原の横町の、ずるずる引摺った青い裳と、紅い扱帯と、脂臭い吸いつけ煙草を憶起すと、憶起す要はないのに、独りで恥しくなって、横を向いた。