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Japanische Klassiker mit Furigana

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とうじゅうろうのこい

藤十郎の恋・恩讐の彼方に

菊池 寛

Lesen Sie 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.146 Zeichen · 74 Bildschirme

Aozora Bunko

が、近づいて来る足音の主は、此処に藤十郎が居ようなどとは、夢にも気付かないらしく、足早に長い廊下を通り抜けて、この部屋に近づくままに、女性らしい衣ずれの音をさせたかと思うと、会釈もなく部屋の障子を押し開いた。が、其処に横たわっていた藤十郎の姿を見ると、吃驚して敷居際に立ち竦んでしまった。

「あれ、藤様はここにおわしたのか。これはこれはいかい粗相を」と、云いながら、女は直ぐ障子を閉ざして、去ろうとしたが、又立ち直って、「ほんに、このように冷える処で、そうして御座って、御風邪など召すとわるい。どれ、私が夜のものをかけて進ぜましょう」と、云いながら、部屋の片隅の押入から、夜具を取り下ろそうとしている。

藤十郎は、最初足音を聞いた時、召使の者であろうと思ったので、彼は寝そべったまま、起き直ろうとはしなかった。が、それが意外にも、宗清の主人宗山清兵衛の女房お梶であると知ると、彼は起き上って、一寸居ずまいを正しながら、

「いやこれは、いかい御雑作じゃのう」と、会釈をした。

お梶は、もう四十に近かったが、宮川町の歌妓として、若い頃に嬌名を謳われた面影が、そっくりと白い細面の顔に、ありありと残っている。