Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
甲野さんは真廂を煽って坂の下から真一文字に坂の尽きる頂きを見上げた。坂の尽きた頂きから、淡きうちに限りなき春の色を漲ぎらしたる果もなき空を見上げた。甲野さんはこの時
「ただ万里の天を見る」
と第二の句を、同じく小声に歌った。
草山を登り詰めて、雑木の間を四五段上ると、急に肩から暗くなって、踏む靴の底が、湿っぽく思われる。路は山の背を、西から東へ渡して、たちまちのうちに草を失するとすぐ森に移ったのである。近江の空を深く色どるこの森の、動かねば、その上の幹と、その上の枝が、幾重幾里に連なりて、昔しながらの翠りを年ごとに黒く畳むと見える。二百の谷々を埋め、三百の神輿を埋め、三千の悪僧を埋めて、なお余りある葉裏に、三藐三菩提の仏達を埋め尽くして、森々と半空に聳ゆるは、伝教大師以来の杉である。甲野さんはただ一人この杉の下を通る。
右よりし左よりして、行く人を両手に遮ぎる杉の根は、土を穿ち石を裂いて深く地磐に食い入るのみか、余る力に、跳ね返して暗き道を、二寸の高さに段々と横切っている。登らんとする岩の梯子に、自然の枕木を敷いて、踏み心地よき幾級の階を、山霊の賜と甲野さんは息を切らして上って行く。