Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
小夜子は過去の女である。小夜子の抱けるは過去の夢である。過去の女に抱かれたる過去の夢は、現実と二重の関を隔てて逢う瀬はない。たまたまに忍んで来れば犬が吠える。自からも、わが来る所ではないか知らんと思う。懐に抱く夢は、抱くまじき罪を、人目を包む風呂敷に蔵してなおさらに疑を路上に受くるような気がする。
過去へ帰ろうか。水のなかに紛れ込んだ一雫の油は容易に油壺の中へ帰る事は出来ない。いやでも応でも水と共に流れねばならぬ。夢を捨てようか。捨てられるものならば明海へ出ぬうちに捨ててしまう。捨てれば夢の方で飛びついて来る。
自分の世界が二つに割れて、割れた世界が各自に働き出すと苦しい矛盾が起る。多くの小説はこの矛盾を得意に描く。小夜子の世界は新橋の停車場へぶつかった時、劈痕が入った。あとは割れるばかりである。小説はこれから始まる。これから小説を始める人の生活ほど気の毒なものはない。
小野さんも同じ事である。打ち遣った過去は、夢の塵をむくむくと掻き分けて、古ぼけた頭を歴史の芥溜から出す。おやと思う間に、ぬっくと立って歩いて来る。打ち遣った時に、生息の根を留めて置かなかったのが無念であるが、生息は断わりもなく向で吹き返したのだから是非もない。