Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
「御役にも立ちませんで……」
「いえ、いろいろ親切にしてくれてまことにありがたい。忙しいところを……」
「論文の方がないと、まだ閑なんですが」
「論文。博士論文だね」
「ええ、まあそうです」
「いつ出すのかね」
いつ出すのか分らなかった。早く出さなければならないと思う。こんな引っ掛りがなければ、もうよほど書けたろうにと思う。口では
「今一生懸命に書いてるところです」と云う。
先生は襦袢の袖から手を抜いて、素肌の懐に肘まで収めたまま、二三度肩をゆすって
「どうも、ぞくぞくする」と細長い髯を襟のなかに埋めた。
「御寝みなさい。起きていらっしゃると毒ですから。私はもう御暇をします」
「なに、まあ御話し。もう小夜が帰る時分だから。寝たければ私の方で御免蒙って寝る。それにまだ話も残っているから」
先生は急に胸の中から、手を出して膝の上へ乗せて、双方を一度に打った。
「まあ緩くりするが好い。今暮れたばかりだ」
迷惑のうちにも小野さんはさすが気の毒に思った。これほどまでに自分を引き留めたいのは、ただ当年の可懐味や、一夕の無聊ではない。よくよく行く先が案じられて、亡き後の安心を片時も早く、脈の打つ手に握りたいからであろう。