Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
活きているものはただ眼玉だけである。それすら活きているのみで毫も動かない。――甲野さんは茫然として、眼玉を眺めながら考えている。
親父も気の毒な事をした。もう少し生きれば生きられる年だのに。髭もまるで白くはない。血色もみずみずしている。死ぬ気は無論なかったろう。気の毒な事をした。どうせ死ぬなら、日本へ帰ってから死んでくれれば好いのに。言い置いて行きたい事も定めてあったろう。聞きたい事、話したい事もたくさんあった。惜しい事をした。好い年をして三遍も四遍も外国へやられて、しかも任地で急病に罹って頓死してしまった。……
活きている眼は、壁の上から甲野さんを見詰めている。甲野さんは椅子に倚り掛ったまま、壁の上を見詰めている。二人の眼は見るたびにぴたりと合う。じっとして動かずに、合わしたままの秒を重ねて分に至ると、向うの眸が何となく働らいて来た。睛を閑所に転ずる気紛の働ではない。打ち守る光が次第に強くなって、眼を抜けた魂がじりじりと一直線に甲野さんに逼って来る。甲野さんはおやと、首を動した。髪の毛が、椅子の背を離れて二寸ばかり前へ出た時、もう魂はいなくなった。