Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
この下女はたしかに小野さんからある報酬を求めている。
小野さんは気のない顔をして下女を見たのみである。下女は失望した。
「通しましょうか」
小野さんは「え、うん」と判然しない返事をする。下女はまた失望した。下女がむやみに笑うのは小野さんに愛嬌があるからである。愛嬌のない御客は下女から見ると半文の価値もない。小野さんはこの心理を心得ている。今日まで下女の人望を繋いだのも全くこの自覚に基づく。小野さんは下女の人望をさえ妄りに落す事を好まぬほどの人物である。
同一の空間は二物によって同時に占有せらるる事能わずと昔しの哲学者が云った。愛嬌と不安が同時に小野さんの脳髄に宿る事はこの哲学者の発明に反する。愛嬌が退いて不安が這入る。下女は悪るいところへぶつかった。愛嬌が退いて不安が這入る。愛嬌が附焼刃で不安が本体だと思うのは偽哲学者である。家主が這入るについて、愛嬌が示談の上、不安に借家を譲り渡したまでである。それにしても小野さんは悪るいところを下女に見られた。
「通してもいいんですか」
「うん、そうさね」
「御留守だって云いましょうか」
「誰だい」
「浅井さん」
「浅井か」