Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
「なに大した用じゃないんですけれども……」
糸子の答は大概半分で切れてしまう。
「少しは出ないと毒ですよ。春は一年に一度しか来ませんわ」
「そうね。わたしもそう思ってるんですけれども……」
「一年に一度だけれども、死ねば今年ぎりじゃあありませんか」
「ホホホホ死んじゃつまらないわね」
二人の会話は互に、死と云う字を貫いて、左右に飛び離れた。上野は浅草へ行く路である。同時に日本橋へ行く路である。藤尾は相手を墓の向側へ連れて行こうとした。相手は墓に向側のある事さえ知らなかった。
「今に兄が御嫁でも貰ったら、出てあるきますわ」と糸子が云う。家庭的の婦女は家庭的の答えをする。男の用を足すために生れたと覚悟をしている女ほど憐れなものはない。藤尾は内心にふんと思った。この眼は、この袖は、この詩とこの歌は、鍋、炭取の類ではない。美くしい世に動く、美しい影である。実用の二字を冠らせられた時、女は――美くしい女は――本来の面目を失って、無上の侮辱を受ける。
「一さんは、いつ奥さんを御貰いなさるおつもりなんでしょう」と話しだけは上滑をして前へ進む。糸子は返事をする前に顔を揚げて藤尾を見た。