Japanische Klassiker mit Furigana
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じゃせいのいん
蛇性の婬
田中 貢太郎
Lesen Sie 蛇性の婬 (じゃせいのいん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.880 Zeichen · 54 Bildschirme
「でも、あんまりですわ」
「なに、宜いのです」
許宣は強いて柄を女の前に持って往った。
「ではすみませんが、拝借いたしましょうか、私の家は荐橋の双茶坊でございます」
女はほっそりした長い指を柄にからませた。
「そうですか、それではまたお眼にかかります」
許宣は女に気をもまさないようにと、傘を渡すなり簷下に添うてとかとかと歩きだした。それといっしょに女も簷下を離れて石を敷いた道の上に出て往った。
許宣はその夜寝床に入ってからも白娘子のことを考えていた。な眼鼻だちの鮮かな女の姿が心ありそうにしてこっちを見ていた。彼は誘惑に満ちた女の詞を一つ一つ思いだしていた。と、物の気配がして寝室の帳を開けて入って来た者があった。許宣はびっくりしてその方へ眼をやった。そこには日間のままの白娘子の艶かしい顔があった。許宣は嬉しくもあればきまりもわるいので何か云わなくてはわるいと思ったが、云うべき詞が見つからなかった。
女は寝床の上にいつの間にかあがってしまった。許宣は呼吸苦しいほどの幸福に浸っていたが、ふと気が注くとそれは夢であった。
翌朝になって許宣は平生のように早くから舗へ往ったが、白娘子のことが頭に一ぱいになっていて、仕事が手につかないので、午飯の後で口実をこしらえて舗を出て、荐橋の双茶坊へ往った。