Japanische Klassiker mit Furigana
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たこのごときもの
蛸の如きもの
豊島 与志雄
Lesen Sie 蛸の如きもの (たこのごときもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.085 Zeichen · 21 Bildschirme
誰も助けにゆく者がない。その時、マダム・ペンギンが、さっと出て来て、彼を抱き起し、大真面目な顔で塵を払い落してやったりしている……。
それからがあのいきさつだ。木村がマダムの体温にふれ、マダムの息を皮膚に受けたのは、恐らくあの時が最初だったろう。ペンギンの胴体がちょっと気に入ったと見える。考えてみれば、マダムが木村を抱き起した時、それだけのこととしては、少し時間が長くかかりすぎたような気がする。蛸が二つからみ合ったら、互に相手のどこかに、必ず、吸盤がふれるものだ。鳥なら羽毛が生えてるけれど、人間ともなれば、蛸と同じに、無防禦の素肌だからね。
「あたし、木村さんといつまでも続くとは思っていなかった。木村さんが浮気なことも知ってたし、あたし一人でないことも知ってた。だけど、まさか、マダムと……。口惜しいわ。マダムは若く見せてるけれど、もう四十すぎよ。だから、マダムの方で熱くなるのは、分らないこともないけれど、木村さんの……気が知れない。気が知れないというより、あたし、口惜しいわ。……口惜しい。」
そんな風に訴えながら、京子は泣いたが、その泣き方が、多分にヒステリックだ。