Japanische Klassiker mit Furigana
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しじみだに
蜆谷
山本 周五郎
Lesen Sie 蜆谷 (しじみだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.957 Zeichen · 28 Bildschirme
佐和山は関東勢が固めているというし、石田軍の落人は捕まりしだいに首を斬られると聞いて、負けいくさになるまでそれほどでもなかったが、敗走を始めてから命が惜しくなった、ひじょうに惜しくなった。どうかして生きたい、生きてもういちど故郷の山河を見、母や妻に会いたいと思った。
――合戦で死ぬならあきらめもつくが、ここまで生き延びて殺されるのはいやだ、どうかして生きたい、母やお直の顔を見るまでは、どんなにしたって生きてみせる。
弥之助は執念のように、ただその一つを思いつめた。どこへいっても関東軍の兵馬がいた、彼は山城のくに高塚という所で、苦しまぎれにその荷駄役のなかへまぎれ込んだ、彦坂という大将の荷駄で、そこから伏見へゆき、さらに京へのぼった。このあいだに領主の石田三成や安国寺恵瓊や、小西行長などという大将が捕えられ、京の六条河原で斬られたことを聞いた。
――佐和山地内は賊将の直領だから、詮議もいちだんと厳しいそうだ。
そういう評判はどこでもしていた。彼は故郷を案じ母や妻の無事を念じながら、しかし帰る決心はつかず、彦坂小刑部の小者のなかで一年あまり過ごした。