Japanische Klassiker mit Furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme
食後散歩。挽地物屋の店にお冬さんの姿みえず、老人もめずらしく仕事を休みて店先にぼんやり坐っている。例のごとく挨拶したれど、老人なんの返事もせず。――午飯の時に宿の女中の話によれば、お冬さんはきのうの夕方に雷雨を冒して出でたるまま帰らずとのこと也。情夫でもあるのかと訊けば、お冬さんは町でも評判のおとなしい娘にて、浮いた噂などかつて聞いたこともないという。彼女が無断にて家出の子細は誰にもわからず。なんだか夢のようなり。――夕より俄かにくもりて、驟雨、雷鳴。お冬さんは今頃どうしているにや。夜に入って雨やみたれば、八時ごろ散歩。挽地物屋の店にはやはりお冬さんは見えず。老人が団扇づかいの唯さびしげなり。
九日、晴。虫が知らしたるか、けさは早く醒めると、雨戸をあけに来た女中から思いもつかない話をきく。お冬さんはゆうべの十一時過ぎに、ちらし髪の素足でどこからか帰って来たるよしにて、お山の天狗にさらわれたるならんとの噂なりとぞ。奇妙なこともあるものなり。食後すぐに行ってみると、お冬さんは真っ蒼な顔をして店に坐りいたり。声をかけても返事もせず、六兵衛老人の姿もみえず。