Japanische Klassiker mit Furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme
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矢田も悪い人間ではないのですが、月給は十五円か十六円の安官員で、それが家内の気に入らないようでしたが、くどくもいう通り、もうこうなっては仕様がないと諦めさせて、あらためて家内から矢田の母に挨拶させると、こちらの不埒を御立腹もなくて、ひとり娘のお嬢さんをわたくし共のところへお嫁に下さるとは、まことに相済まないことでございますと言って、矢田の母は又もや涙をこぼして喜んだそうです。そこで、ことしももう余日がないので、来春になったらばいよいよお蝶を輿入れさせるということに取りきめて、まずこの一件も一埒明いたのでした。しかし物事にはすべて裏の裏がある。その詮索をおろそかにして、ただ月並の解決法を取って、それで無事に納まるものと思い込んでいたのは、まったくわれわれの間違いであったということを後日になって初めてさとったのです。」
こう決めた以上は、もとより隠すべきことでもないので、溝口家ではその年の暮れから婚礼の準備に取りかかった。溝口の細君は娘を連れて、幾たびか大丸や越後屋へも足を運んだ。そうしたあわただしいうちに年も暮れて、ことしは取り分けて目出たいはずの明治十五年の春が来た。