Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうにんぎょう
蝋人形
小川 未明
Lesen Sie 蝋人形 (ろうにんぎょう) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.886 Zeichen · 10 Bildschirme
「他の子供衆は皆んな学校へ行きなさるのに、家の清吉ばかり何してこう意気地がないのだろう。」と母親は泣いた。
その年の六月頃であった。ちょうど近所の家から今東京の親類の者が来ていてその知合の或る人形屋で丁稚が欲しいということだがお前さんの家の清吉をやる気がないかという相談がかかった。その相談は速に成立って、清吉は六月の某日青葉の薫る頃に故郷に暇乞をして、一人の四十格好の男に伴れられて、西東も知らない都の空へ旅立をした。
その後草木は幾たびか浅緑の衣を脱ぎ換えた。清吉からはその後何等のたよりもなかった。母親は近所の人に向って今頃はどないにか大きくなって、すっかり様子も都風と化ってよい丁稚になったでしょうと話した。兵蔵も、仕事場で蝋を溶しながら、暗い片隅の方で釜の下の火を掻き廻しては、折々その手を止めて町の家根の上を飛んで彼方に淋しそうに見える杉の巓を越えて、果ては北となく、西となく散りて行く雲を眺めて、仕事をするのを忘れて我が子の身の上を案じたことも二度や三度ではなかった。
月日は夢の中に過ぎた。清吉が東京へ出てから五年目の春の暮である。この灰色の、海に近い町の祭日である。