Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ちょうのえ
蝶の絵
久生 十蘭
Lesen Sie 蝶の絵 (ちょうのえ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.644 Zeichen · 49 Bildschirme
帰朝する途中、シンガポールや海防で南方の風景に憑かれ、マレーを振出しに、ジャワ、スマトラ、フィリッピンと、邦人のゴム園やサイザルの栽培地で絵を買ってもらいながら、二十年近く、飄々としていた。正義派で、善人で、終戦当時はシンガポールで、戦犯や引揚同胞の世話をしていたということだが、すすめられて、南方で描きためた絵の個展をやることになり、忙しそうにしていた。
「会場はきまったか」
「やっとこさで、日仏画廊へ割りこんだが、そうしたら、急に怖気がついてねえ」
「いつ頃やる」
「早くて、二月のはじめ……それで、今日、ちょっとおねがいがあってやってきた。デ・ヴィゴというのは、フィリッピンのネグロス島で、大きな砂糖工場をやっていた金持なんだが、長女のリーナという娘が、山川の後を追ってきて、いま東京にいる」
「須田とも話していたんだが、そんなものがいるらしいことは、聞いていた。噂は事実なんだね」
「山川は、部隊副官のくせに、親比島派のリーダーみたいなことをしていたもんだから、知識階級や、上流の家庭に受けがいい。マリポサこと津村宇太郎なんかとデ・ヴィゴ邸へ出入して、家族同様に待遇されていたんだが、デ・ヴィゴは、ネグロス島のゲリラを指揮した嫌疑で四十何人の大家族が、ひとりのこらず憲兵に虐殺されてしまった」