Japanische Klassiker mit Furigana
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こわく
蠱惑
豊島 与志雄
Lesen Sie 蠱惑 (こわく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.765 Zeichen · 28 Bildschirme
私にはまだこの屹度という強い意志があるんだ。
――その次の火曜に私は一つの武器を持ってカフェーに行った。それは彼が煙草を吸わないことなんだ。その時私は大海の真中に身を投ずるような心地がした。
私は葉巻を二本途中で買った。一本は袂の中にしまった。そしてカフェーの前に立った時一本に火をつけた。
私はじっと下腹に力を入れそして拳を握った。それから右手の指に強く※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだ葉巻をすーっと吸った。その煙を吹きつけ乍ら私は扉を押した。
其処には早や彼が来て静に腰掛けているのを私は見た。
私はそのままつかつかと進んで彼の傍に立った。彼がふり向いてじっと私を見上げた。ここだと私は思った。で全力を尽してぐっと沈着を装った。そして云った。
「君は煙草を吸わないんですね!」
その時私の眼は恐ろしく彼を睥みつけていたんだ。それでも彼はゆっくりと答えた。
「煙草はきらいです。」
何と云う妙な声だろう! 幅広い風が地面に沿って流るるようなんだ。妙にぽかんとして消え去ったその声の跡を追っていると、何だか柔いものが私の全身を捉えた。