Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぬられたかいとう
血ぬられた懐刀
国枝 史郎
Lesen Sie 血ぬられた懐刀 (ちぬられたかいとう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.586 Zeichen · 71 Bildschirme
庭には花が咲いているはずだ。風に巻かれて諸々の花が、繚乱と散っていることであろう。
が、この部屋は静かである。燈火が金屏に栄えている。円窓の障子に薄蒼く、月の光が照っている。馨しい焚物の匂いがして、唐金の獅子型の香炉から、細々と煙が立っている。
なやましい春の深夜である。
それに似つかわしい美男、美女が、向かい合って黙って坐っている。
花ヲ踏ンデ等シク惜シム少年ノ春
燈火ニ背ムイテ共ニ憐ム深夜ノ月
そういう眺めと云わなければならない。
と、鼓の音がした。秋元の居間から聞こえてくる。つれづれのままに取り出して、秋元が調べているのであろう。曲はまさしく敦盛であった。一つ一つの鼓の音が、春の夜に螺鈿でも置くように、鮮やかに都雅に抜けて聞こえる。
秋安とお紅とは顔をあげたが、じっとその耳を傾けた。
と、自ずから眼が合った。
「まずお聞きなさりませ」
眼を見合わせた一瞬間に、秋安はお紅の眼の中に、愛情の籠もっていることを、直覚的に看て取った。
「廻国をするということは、この娘の本当の願いではない。たしかにこの俺を愛している」
そういうことも感ぜられた。
で、秋安は勇気づいて、思う所を述べ出した。