Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぬられたかいとう
血ぬられた懐刀
国枝 史郎
Lesen Sie 血ぬられた懐刀 (ちぬられたかいとう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.586 Zeichen · 71 Bildschirme
ちょいと五右衛門は主殿の方を見たが、
「相変わらず今夜も盛んだの」
「うん」と云ったものの常陸介の声には、憂わしい不安な響きがあった。
「あの有様だから困るのだ」
「そうさ、あれでは困るだろう」
で、沈黙が二人へ来た。
「ところで五右衛門結果はどうだ?」
ややあって常陸介がこう訊ねた。
「うむ、ともかくも一通りは探った」
五右衛門の声には笑殺がある。
「ただの私用ではないのだよ」
「俺もそうだろうとは感付いていたが、幸蔵主の態度が不明なのでな」
「あれは秀吉の懐中刀さ」
「が、我君にも忠実のはずだ」
「しかしそれは私情だよ。大事に処せば私情などは、古沓のように捨てしまう」
「お互いそれには相違ないさ。……で、幸蔵主が我君を連れて伏見の城へ行こうとするのは、やはり太閤の指し金かな?」
「そうだ秀吉の指し金なのだ」
「伏見へ召してどうするのだろうな?」
「まず詰腹でも切らせるだろうよ」
「詰腹。……ふうむ。……そうかも知れない。……」
常陸介にもそういうことは、以前から心にあったものと見えて、そう云われても驚かなかった。しかし苦悶は感じたらしい。俯向いて足許を睨んでいる。五右衛門もしばらくは物を云わない。