Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
(いずれは彼奴も、この左門を討とうと、この界隈を探し廻っていることであろう、そこを狙って討ち取ってやろう)
こう思い、あの農家に頼み込み、しばらく身を隠して貰っていたのであった。出かけて行って、頼母の居場所を探りたくはあったが、松戸の五郎蔵一味が、まだ府中にいて、この身の現われるのを待ち、討ち取ろうとしているらしかったので、今日までは外出しなかったのである。
左門には、あの夜以来、心にかかることがあった。紙帳を失ったことである。何物にも換えがたい大切の紙帳を!
そう、紙帳は、左門にとっては、ちょうど、蝸牛における殻のようなものであった。肉体の半分のようなものであった。その中で住み、眠り、考え、罪悪さえも犯した紙帳なのだから! 恋人のような離れ難いものと云ってもよかった。それに紙帳は、彼にとっては、一つの大きな目的の対象でもあった。頼母を殺し、その血を注ぎ、憤死された父上の妄執を晴らしてあげたい! その血を注ぐ対象が紙帳なのであるから。
その紙帳を紛失した彼であった。淋しそうに、気抜けしたように歩いて行くのは、当然といってよかろう。
(あの夜紙帳が、独りで歩いたのは、中にお浦がいて、紙帳から出ようとしたが出られず、もがきながら走ったからだ。