Japanische Klassiker mit Furigana
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がいていのようこうろ
街底の熔鉱炉
佐左木 俊郎
Lesen Sie 街底の熔鉱炉 (がいていのようこうろ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.879 Zeichen · 14 Bildschirme
その家は四十前後の独身の男の世帯であった。洗濯物が二三枚あった。家の中は三日前に掃除して行ったままで別段に汚れてはいなかった。併し彼女は一通り形式だけの掃除をした。
「休んでおいで。掃除なんかどうでもいいんだから。」
彼は腹匐いながら言った。
「まあ、そこへお坐り!」
読みかけの雑誌を伏せて彼は命令的に言った。
「でも、ちょっと、掃くだけでも……」
「別に汚れてないんだから、いいんだよ。まあ、お坐り、そこへ。」
「では、これを置いて来ますから。」
房枝は箒を片付けてから、身繕いをして二階へまたあがって行った。彼女は男から三四尺ほど離れて坐った。そして薄く白粉を掃いた顔をうちむけた。
「房枝さん! ――房枝さんって名だったね? 一昨昨日、あの婆さんから、幾らもらったかね?」
「五円でしたわ。」
「五円? じゃ、儂が渡した半分も、おまえの手には渡ってやしないんだね。――本当に五円だけなんだねえ?」
「え。本当ですわ。」
「あの婆め!そんなぼり方ってあるもんか。――儂は出張して来たばかりで、手許に少し余計にあったもんだから、拾円でいいというのを、おまえに余計やってもらおうと思って、拾五円やって置いたんだ。