Japanische Klassiker mit Furigana
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けさともりとお
袈裟と盛遠
Lesen Sie 袈裟と盛遠 (けさともりとお) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 16 Bildschirme
三年前と云うよりも、あるいはあの日までと云った方が、もっとほんとうに近いかも知れない。あの日、伯母様の家の一間で、あの人と会った時に、私はたった一目見たばかりで、あの人の心に映っている私の醜さを知ってしまった。あの人は何事もないような顔をして、いろいろ私を唆かすような、やさしい語をかけてくれる。が、一度自分の醜さを知った女の心が、どうしてそんな語に慰められよう。私はただ、口惜しかった。恐しかった。悲しかった。子供の時に乳母に抱かれて、月蝕を見た気味の悪さも、あの時の心もちに比べれば、どのくらいましだかわからない。私の持っていたさまざまな夢は、一度にどこかへ消えてしまう。後にはただ、雨のふる明け方のような寂しさが、じっと私の身のまわりを取り囲んでいるばかり――私はその寂しさに震えながら、死んだも同様なこの体を、とうとうあの人に任せてしまった。愛してもいないあの人に、私を憎んでいる、私を蔑んでいる、色好みなあの人に。――私は私の醜さを見せつけられた、その寂しさに堪えなかったのであろうか。そうしてあの人の胸に顔を当てる、熱に浮かされたような一瞬間にすべてを欺こうとしたのであろうか。