Japanische Klassiker mit Furigana
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はだかぎ
裸木
豊島 与志雄
Lesen Sie 裸木 (はだかぎ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.049 Zeichen · 33 Bildschirme
佐野陽吉には、月に一度か二度、彼の所謂「快活の発作」なるものが起った。
初めはただ、もやもやっとした、煙のような、薄濁りのした気分……。それが次第に濃くどんよりと、身内に淀んできて、二つの異った作用を起した。一つは、頭脳がひどく鈍ってきた。一種の毒気みたいなものが、頭の中に立罩めて、こみ入ったことは考えられなくなり、細かなことは感じられなくなり、あらゆる陰影や色合が失せて、変に露骨になるのだった。丁度白昼の薄曇りに似ていた。それからも一つは、肉体が急に精気づいてきた。血量がふえて、過剰になって、睥肉の歎に堪えないという風に、何かしら激しい労働でもしてみたくなるのだった。そしてその別々な二つの作用が、或る時期にぴたりと一つのものにまとまる。と、彼はにやにやと不気味な薄ら笑いを洩した……。そういう状態を、彼は自ら、人間性の獣化と考えるのであった。
人間性の獣化ということは、必ずしも不名誉なことでも不愉快なことでもない。否それは却って、佐野陽吉にとっては、愉快な生々とした時間だった。世間体とか気兼とか矜持とか、そういった事柄から一歩外に踏み出したものだった。