Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
Lesen Sie 親鳥子鳥 (おやどりことり) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.828 Zeichen · 181 Bildschirme
「山がないですなあ」
と久作さんは外へ出ると直ぐに周囲を見廻しながら言った。
「東京に山があっちゃ溜りませんよ」
「山のないのは心細いものですな。何だか身体がふうわりふうわりするようだ」
「そんなこともありますまい。帽子の具合が悪いですか?」
と僕は久作さんが帽子を小脇に抱えているのに気がついた。
「いや、頭痛がすると悪いから取ったり被ったりして行くだ」
と久作さんは又被ってくれた。
停留場で電車を待っている一寸の間に、僕は久作さんの姿を見失って吃驚した。煙草でも買いに行ったのかと思って引き返そうとすると、向う側の脇道から帽子を抱えて駈けて来た。
「何うしました?」
「今深井の与平が彼方の電車から降りたようだったから、追って行ったが、ナカナカ足の速い手合だ。何処かあの辺へ入ってしまいました」
と久作さんは息をはずましていた。
「それは人違いでしょう?」
「いや、与平は東京だか横浜だかへ来ているだ。俺に借りがあるだ」
「然うですか。あ、電車が来ましたよ」
と僕は注意したが、これは骨の折れる御案内だと思った。銀座や浅草あたりへ行けば深井の与平さんに似た男が何人いるかも知れない。