Japanische Klassiker mit Furigana
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はなしのくずかご
話の屑籠
豊島 与志雄
Lesen Sie 話の屑籠 (はなしのくずかご) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.252 Zeichen · 11 Bildschirme
男は、凡そ悲壮な限りの顔付をして、いっそのこと、一緒に死んでしまおうかと、淡色のとろりとした液体の小瓶を、女の前に差置いたのである。
「あたし、生きるも死ぬるも、とうからあなたにお任せしているのよ。」
事もなげに、にっこり笑った顔が、ふだんより一層晴れやかで美しい。
どうせ死ぬのだ、書置きも何もいるものか。ただ、一杯のんで、ゆっくり話してから……。だが、そう掛ってみると、さすがに、酒もまずく、話もとだえがちで、時間だけがいやに早くなって、夜はしいんと更けて肌寒い。
それでは……覚悟はとうに出来ているし、もう深刻も悲壮もなく、心気落ち沈んだまじまじとした気持で、小瓶の液体を盃に受けて、男がぐいと干せば、女はそれでも眼をつぶって、一息に飲んでしまった。
時は秒を到んでゆく。だが、薬液の効果はなかなか現われない。
「まだ……何ともないわ。」
「今に……苦しくなるよ。」
「そう。」
その素純な眼付から、男は眼を外らす。その眼を、女は追っかけてくる。
「まだかしら……。」
男の眼頭が熱くなって、あぶなく、ほろりとしかけると、女はもう待ちきれなくなって、わっと、男の膝にとりすがって、声を立てて泣きだしてしまった。